ビンボー

これも若い時の話だ。
仕事の最中、得意先との会話の中で彼が「俺が若い時に先輩から言われたのは、商売は貧乏人相手にやれとのことだ」と言い出した。氏の言うところによると「貧乏人は無駄使いをする。金持ちは財布の紐が固い」とのことらしい。私が貧相でお金のない雰囲気を醸し出していたのかは分からないが、耳の痛い話であった。確かに貧乏人気質の私は衝動で物を買ったりついでで物を買ったりする。今般、百円ショップが盛況なのも理解できる。お客が必要なものだけを買っていれば成り立たない商売だ。今にして思えば人生の先輩から貴重な教訓をいただいていたのだ。
 当時、独身の私の部屋には何故買ったのか分からないものがゴロゴロしていた。不急不要の買い物が生活を苦しめたりしていた。流石に結婚し可処分所得が激減してからはそんなことはできなくなったが….。人生の終盤にきて少しばかり貯まった小遣いを数えて、何か欲しかったものを買おうとしても終活の最中では今度は欲しいものが見つからない。田舎者で貧乏家庭出身の私にはカタチの無い芸術やボランティアにお金を使う意味がわからない。ウクライナ支援に一万円寄付したことをいつまでも覚えているような小さな人間だ。演歌歌手を追いかけたり、ギャンブルにハマるほど熱い人間でもない。
 ここで私はふと気がついた。本当の貧乏はお金がないことではない。本当に好きなものや欲しいものに出会えなかったことだ。今頃、もっと若い時に身につけていなければならないことがあることを知った。

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