若い頃、仕事上の先輩が「金と鼻くそはたまればたまるほど汚くなる」といつも言っていた。金が貯まったことがない私は意味が分からなかったが、老後の資金を意識し小銭を数える歳になったら、お金に執着するようになった。
それと話が違うかも知れないが、若い時に消化器系の病気で緊急入院したことがあった。6人部屋では色んな世代の人がいたが、元気の良い?中年の男性が「もしいい歳になってがんになったら死んだ方がいい」と言うと、隣のベッドの100歳になる癌で入院のご老人が「いくつになっても、もう死んでもいいとか思わないものだよ」とたしなめられた。ご両人より若かった私はそういうものかと聞いていた。
それからも病気をするたびにご老人の言葉を思い出すが、ふと思えば若い時の方が簡単に「死ぬ」という言葉を吐いていたなぁと思う。歳を取れば取るほど命に対する執着が強くなるのを感じる。もう「お迎えが来てもいい」などの老人の言葉は信じない。この歳まで生きて来れたから「もう死んでもいい」とはけっして思わない。